科学技術が発展した現代も、実は神話の世界でしかない? ~ 『ドーキンス博士が教える「世界の秘密」』を読んで ~
「利己的な遺伝子」で有名なリチャード・ドーキンス氏が書いた『ドーキンス博士が教える「世界の秘密」』を読んだ。
現代科学の概要書
「世界の秘密」というキャッチーなタイトルに惹かれて読んでみた。
内容は現代の自然科学についての概要を説明している本だった。
遺伝子や進化、元素や宇宙、地震や虹のメカニズムなど、幅広い分野について薄く広く説明している。
どのページもカラフルなイラスト満載なので重たくなく、科学に疎い人でも義務教育レベルの言葉で平易に書かれて読みやすい。
表紙のそでに「大人から子供まで」と書かれているけど、小学生にはちとキツいと思う。
神話からつながる科学
それぞれの話題ごとに小分けされていて、大部分の章は大昔の神話から始まる。
虹のメカニズムの章では、世界最古の物語であるギルガメシュ叙事詩の一説が紹介され、これが聖書にある「ノアの箱舟」の元ネタであることを知った。
他にも北欧、タスマニア、日本、アフリカなど、世界各地の神話から科学を紹介するという切り口がとても面白かった。
大昔の人が信じてきたことを、現代科学を使って大まかに説明していくという流れがこの本の大きな特徴の一つ。
科学は現代の「神話」?
この本で最も興味深いと思ったのは、先に述べた神話と科学のつながりの部分。
現代に生きる我々にとっては、神話、特に物事の始まりに関する創世神話は世界の自然現象を例えた「ものがたり」程度にしかとらえていない。
しかしそれらが生まれた当時の人にとって、神話は物事の成り立ちを説明する「科学」だったんじゃないかという印象を受けた。
どこで知ったか思い出せないけど、科学というのは絶対の真理ではなく、「ある事柄について、その時代において最も説得力のある説明」であると聞いたことがある。
実際、これだけ科学が発展した現代でも「定説を覆す発見」など、これまで正しいと信じられてきた物が実は根本から間違っていたことが分かることがある。
今の時点ではもっとも正しいと思われていることでも、数百年、数千年後の人類からすれば鼻で笑ってしまうほど見当違いなことがたくさんあるんじゃないだろうか。
もし数千年後の人類が『●●博士が教える「世界の秘密」』という全く同じ構成の本を書いた場合、章の初めに書かれる神話として、
「21世紀の人類は、この宇宙が「ビッグバン」と呼ばれる大爆発から始まったと信じていた。」
と紹介されていてもおかしくはない。
その時代における真理(に最も近い説明)を科学と呼ぶ。
しかしそれは未来から見れば神話のようなものでしかない可能性がある。
これだけ発展した科学によって超がつくほど現実的な世界に生きていると思っている僕たちが、未来人から見れば、実は思っている以上に神話の世界に生きているのかもしれないというのが、この本のタイトルにある「世界の秘密」なんじゃないかなぁと、ふと思った。